遊戯王

暁闇-02.明星に恋う

 あの星明かりを見ただろう? 日が暮れ落ちたら顔を出し、月が昇れば居なくなる。そうして夜が終わるころ、再び明るく輝いて、朝日の中へ消えていく。たったひとりで粛々と、夜の底へも行けなくて、真昼の空にも出られない。 それがどうにも愛しくて、この…

暁闇-01.明星に請う

「あれ、先客がいたんだ」 扉を開けた途端、海風がふわりと吹雪の髪を膨らませた。時刻は明け方四時。月は沈んでしまっているが、太陽が昇るにはまだずいぶんと余裕がある。 夜闇の面影を残す空を背景に、その少年は甲板にひとりきりで立っていた。「誰?」…

Unknown Loveletter

 天上院吹雪はモテる。 彼と一度でも行動を共にした者なら信じてもらえると思う。とにかく、とんでもなくモテるのだ。 吹雪がデュエル場に上がるだけで会場は湧き、観客席には黄色い声援が飛び交う。ドローしただけ、モンスターを召喚しただけで、生徒の目…

Happy unbirthday

ぱかん、と破裂音と共に陽気な紙吹雪が飛んできた。「誕生日おめでとう!」「……? 何の真似だ?」亮は後ろ手でドアを閉めて冷静に対処する。寮の廊下にはずらりと同級生たちが並んでいて、亮が起きてくるのを待っていたとでも言いたげだ。「何って、今日は…
ティーンエイジの肖像-#01 青い髪の転入生

ティーンエイジの肖像-#01 青い髪の転入生

 うららかな春の日だった。 木漏れ日が溢れるベンチに座り、亮はデッキを最終確認する。《サイバー・ドラゴン》。愛着があり、伝統あるサイバー流のカードだ。亮はとりわけ、この《サイバー・ドラゴン》のカードが気に入っていた。特殊召喚のしやすさもある…
溶暗

溶暗 fade-out

 蓋を回し開けるとコーヒーの香りが鼻をかすめた。だいたいこんなものだろう、とスプーンで大雑把にそれを掬い、まだ空の水筒へざらざらと落としていく。 コンロに掛けた二種類の小鍋が丁度沸いた。片方はお湯で、もう片方は牛乳だ。この牛乳特有の乳臭さが…

きみを馳せる

『ああそれ! クリスマスプレゼントだよ!』 電話口で彼はあっけらかんとした口調でそう言った。「気持ちはありがたいんだけどさ。吹雪、きみの中のサンタクロースは南半球の設定なのか?」 二つ折りの携帯電話と耳と肩の間に挟み、優介は手にしたそれを広…
味気なくもない男

味気なくも無い男

 クリームチーズとサーモンが乗ったクラッカー。二色のオリーブで生ハムを挟んだ小さな串。深緑色が鮮やかなパテに、三角に切られたキッシュ・ロレーヌ。会場の無数の照明を浴び、それらはいきいきと光を反射している。だがこの程度の立食パーティーなんて、…
海が呼んでいる

海が呼んでいる

 どうせサボるならビーチコーミングに行こう、と提案すると、なんだいそれ、と優介はこちらへ目を合わさないままに返事をした。「漂着物の観察のことさ。砂浜を歩きながらそこに落ちてるものを色々見てみるんだよ」「つまりただの散歩ってことか?」「そんな…