それも幸せと呼べるだろう
成人向けの表現を含みます。パスワードは「例の数字三桁」×「2023年現在の成人年齢」です。
TEXT あんスタenst,R18,モブ,モブ斑,三毛縞斑
腐れ縁でも縁は縁
引っ越しの段ボールも残り僅かになった。最初の数日は千秋や薫に手伝ってもらっていたが、いつまでも引き留めるわけにもいかない。一人で黙々と荷ほどきと整理を片付け、ようやく人並みの生活が送れる手筈が整った、五月半ば。日付が変わってすぐのことだ。…
TEXT あんスタenst,カプなし,レゾ,三毛縞斑,深海奏汰
REPLAY:ワンシーン
「あさがお」「ん?」「あさがお。うまくそだたなかったんです。むかし」 アイスを齧るのをやめ、奏汰はぼんやりと遠くを見る。防波堤に腰掛ければ、視界に広がるのは海ばかりだ。余計なものは何一つない。潮風に牛乳アイスの甘い匂いが混じる。薫は髪を耳に…
TEXT あんスタenst,深海奏汰,羽風薫,薫奏
旅は道連れ世は情け─8.リバースデー
三月末。 道端の雑草が順調に緑を増やしていく。顔を上げれば、青空には一面の桜が広がっていた。 桜色、とはよく聞くが、言ってしまえば大部分が白く、薄赤色が申し訳程度に中心部を染めているくらいだ。しかしその申し訳程度の薄赤色が、気持ちをどこか…
再録
旅は道連れ世は情け─7.点と線
「薫くんや〜、元気を出しておくれ、頼むから」「え〜……頼まれてもそう簡単に元気なんて出ないよ……」「そう言わずに。次の現場へ移動なんじゃから。……薫く〜ん」 露骨に気落ちしている薫に零は泣きつく。薫は普段は仕事とプライベートは切り離している…
再録
旅は道連れ世は情け─6.共謀罪
「薫くん。ちょっといいかえ」 音楽番組の収録終わり、衣装から着替えて荷物をまとめている最中に、零に呼び止められた。薫はタオルで汗を拭いながら生返事をする。晃牙とアドニスはこのあと別の番組の打ち合わせがあるからと既に局を出ているらしい。 零に…
再録
旅は道連れ世は情け─5.まじない
『──おめでとう。おめでとうございます』『今年もお元気で。ご無事に過ごせますように。我らが生き神さま』 祝辞が嬉しくないわけじゃない。お祝いされるのは誰だっていつだって、いくつになっても嬉しいものだ。『どうぞ健やかに』 彼らが望むのは象徴だ…
再録
旅は道連れ世は情け─4.あるいはひとつの終わり
「かおる、かえってたんですね〜。ただいまです〜」「ああ、おかえり」 薫は煙草を灰皿に押し付けて火を消し、煙を吐き切ってからリビングへ戻った。 先週の薫の誕生日のこと。 奏汰が宣言した通りテーブルには『スペシャルメニュー』もとい、マグロ丸々一…
再録
旅は道連れ世は情け─3.束の間のワルツ
十月の末。秋。 乾いた空気が頬を撫でる。いつもと違うスーパーへ行ってみたくて、散歩がてら二人で並木道を歩いていた。薫が「寒くなってきたね」とぼやけば「もうすっかり『あき』ですね」と奏汰は返した。 街並みはすっかりハロウィンムードになってい…
再録
旅は道連れ世は情け─2.蔵匿罪
「朔間くん、羽風くん、お疲れ様」「ああ、ありがと」マネージャーから冷えた水のボトルを受け取る。今日は零と二人での撮影の仕事だった。上々の出来だ。薫は貰った水をちびちびと飲みながらスマートフォンでニュースサイトを開く。「おや、買い換えたのじゃ…
再録
旅は道連れ世は情け─1.容疑者K
旅は道連れ 世は情け花に嵐の喩えもあるささよならだけが人生だ最初で最後のデートをしようあの日の続き漂流する今未来に未練を残さないため埋めた死体を数えよう誕生日にはお祝いしようそしてぼくらは旅に出た八月の終わり。その日は一日中妙な天気だった。…
再録
袖擦り合うのも他生の縁
「もしもさぁ」 奏汰の背中へ薫は呼び掛ける。青暗い館内は水槽の照明のおかげでほの明るく、まるでクラゲ自身が発光しているかのようだ。奏汰は水槽のガラスに片手をついたまま、ソファーベンチに座る薫へ振り向く。「もしも?」「……もしも、俺たちが、も…
TEXT あんスタ 再録enst,奏薫,深海奏汰,羽風薫