不眠の病/不安の病
がくん、と首が落ちた。その衝撃で吹雪は目を覚ます。 吹雪はぼんやりと目を擦りながら、壁にかけられた時計を見る。どうやら十分間ほど寝落ちしてしまっていたらしい。ガラス窓の外に降る雨が一層強くなっている。少し身動きしただけでパイプ椅子は軋み、…
TEXT 遊戯王YGO GX,ジェネタイ4,吹藤,天上院吹雪,藤原優介,首絞め
ミモザの福音-#03 再訪のジュブナイル
その日はどこまでも透明に突き抜けた、見上げれば空へ落ちていく錯覚さえしてしまいそうな青空だった。廊下の窓から見えた清々しいあの青を、吹雪ははっきりと記憶している。前日に島を通過した台風が分厚い雲の一切を吹き飛ばし、空の天井が高く高く広がっ…
TEXT 遊戯王YGO GX,吹藤,天上院吹雪,藤原優介
ミモザの福音-#02 さみしさの始点
ゴロゴロと引きずる車輪がアスファルトに削られている。荷物はこのキャリーケースと背中のリュックひとつぶんだけ。島での寮生活が長かった優介は私物らしい私物をほとんど持っておらず、ほぼ身ひとつで出てきたと言っても過言ではない。 四月、童実野町。…
TEXT 遊戯王YGO GX,三天才,丸藤亮,吹藤,天上院吹雪,藤原優介
ミモザの福音-#01 漂泊者たちの寄る辺
二つ折りの携帯電話が唐突に震える。ランプが七色に光り輝き、本人から押し付けられた着信音がけたたましく鳴り出した。彼──天上院吹雪からのメールだ。『今度のOB交流会で、そっちにボクが行くことになったんだ。スケジュールの都合であまり長居はでき…
TEXT 遊戯王YGO GX,吹藤,天上院吹雪,藤原優介
俺はアイツが嫌いだ
入学式の日、通学路の桜並木。 こいつらみんな一年生かぁ、と黒山の人だかりに流されるまま歩いていると、何気なくパッと顔をあげた先で視線がぶつかった。たぶん一目惚れだった。 翌日、そいつが男だと知って小さくショックを受けた。たぶん失恋だった。…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,いとじゅん,伊藤,吉野順平
反射
「…アンモナイトだ」「はい?」「アンモナイトだよ。遊食アンモナイト。炭酸カルシウムが折り重なって七色に光るんだって。あんたの目はその色をしてる」「…初めて言われましたね」「あっほんと?七三のハジメテ、奪っちゃった?」「…」「あっ勿体ない!も…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,七海健人,真七,真人
走って帰ろう─02.ひかりのむこう かげのがわ
ごうん、ごうん、と洗濯機が唸っている。校内に設けられた、生徒用のランドリールームに斑と光は来ていた。何台もの洗濯機がずらりと並び、そのどれもが稼働しているせいでなかなか騒音レベルが高い。脱水が終わるまであと数分だ。そっけないパイプ椅子が軋…
再録
走って帰ろう─01.猫を追う
猫の影が見えた気がした。 しゅるり、と尻尾の先が茂みに消えていった気がしたのだ。そういえばレオさんが猫をかわいがっていたのだっけ、と斑は旧友のことを思い出す。その猫かどうかはわからないが、学院には猫やら犬やら複数種類の動物が出入りしてい…
再録
おもかげさがし
右手でタバコをくわえ、ポケットからライターを取り出し、点火して一呼吸目。伊藤は白く濁った煙を吐きながら、コンビニの裏手口の壁にもたれかかる。寒さで白くなる息とは違う、不透明で淀んだ白。片腕だけで生活するのにもずいぶん慣れてしまった。もう三…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,レゾ,伊藤,真人,虎杖悠仁
痛みの味
「順平と喋るのはストレスがなくていいね」 真人は満足気に唸り、大きく背伸びをした。ハンモックがゆうらりと左右に振れる。「あんまり動くと落っこちますよ」 へいきへいき、と真人は順平の注意を軽くいなした。「順平、なに?」「いいえ、なんでも」「ふ…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,まひよし,吉野順平,真人
はびこる
あれ以来、隣の部屋はそのままになっている。 あいつの私物はもとから少なかった。鞄ひとつに納まるものしかなくて、必要最低限の着替えくらいしかそれらしきものは持ち込んでいなかった。恵も私物は多いほうではないが、一度だけちらりと見えたクローゼッ…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,伏虎,伏黒恵,虎杖悠仁
午前十時のユウレイクラゲ(初稿版)
記憶がある。 十年ほど前、まだ小学校にも上がる前のこと。母に連れられて見た水槽はどれも大きく、広く、青く澄んでいた。館内全体が薄暗く照明を落とした造りになっているのもあり、まるで自分たちが海底を歩いているような心地だった。母と手を繋いで順…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,吉野順平,虎杖悠仁,順悠