反射

「…アンモナイトだ」

「はい?」

「アンモナイトだよ。遊食アンモナイト。炭酸カルシウムが折り重なって七色に光るんだって。あんたの目はその色をしてる」

「…初めて言われましたね」

「あっほんと?七三のハジメテ、奪っちゃった?」

「…」

「あっ勿体ない!もっと見せてくれたっていいじゃん!けち! 俺ねえ勉強してるんだよ!?毎日!!国語算数理科社会、美学に医学、精神哲学、それから人間のありとあらゆる言動と行動理念について!だから遊食アンモナイトだって知ってるんだよ。ほら、この本だ。この図版の光り方とそっくり!ねえ七三、俺はあんたの瞳のこと知れて楽しいよ。あんたはどう?」

「知識欲ですか。勉強熱心なのはいいことです。ただ私は猫を殺したくない。猫以外だってそうです。堅実に一歩一歩。勉学を遊びに感じるのは素晴らしいですが、アナタに成長して貰っては困るので」

「それ、俺に死んでほしいってこと?それとも死なれると困るってこと?」

「…」

「目、もっかい見せて?」

「そう言うアナタの目は、逐一左右の色が変わりますね。瞬きのたびに切り替えでもしてるんですか」

「あーこれ?何色がいっかなって、しっくりこなくてさあ。色々試してんの」

「チカチカして鬱陶しいです」

「あっそう?じゃあそーだな、何色がいい?七三の好きな色にしてあげるよ」

「…お好きなように」

「好きにしていい?じゃーね、これ!七三、アンタとお揃いの遊色アンモナイトの目だよ!どうどう?気に入った??」

「……」

「どしたの」

「…いえ。自分はこんな瞳だったのかと少し吃驚して」

「……ふうん?うん、綺麗だよねこの目。俺も好き。アンタは?」

「……まあ、悪くはないでしょう」