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Unknown Loveletter

 天上院吹雪はモテる。 彼と一度でも行動を共にした者なら信じてもらえると思う。とにかく、とんでもなくモテるのだ。 吹雪がデュエル場に上がるだけで会場は湧き、観客席には黄色い声援が飛び交う。ドローしただけ、モンスターを召喚しただけで、生徒の目…

よすがらを往く─01.サマータイムの終わり

 珍しくよく晴れた月夜だった。 この家は思い出ばかりで溢れている。右を見ても左を見ても、喉元を堰き止められているような痛みで感覚は支配されている。 エドは一冊の色褪せた手帳を手にしたまま、ぐるりとリビングを見渡した。そろそろ日付も変わるころ…

よすがらを往く─02.運命だった子供たち

 療養所の中庭で見た斎王の姿を思い出す。 端的に言えば──怖い、と思った。 入院着でふらふらと中庭の花に惑う姿。長い深紫の髪はしっかり陽光を受けているのに艶はなく、手の甲や首筋には病的に痩せた骨が浮き上がる。中庭の白い石楠花が惜しげもなくそ…

よすがらを往く─03.憧れの残滓

「聞いてた話と違うじゃないか! 亮、兄弟仲をどうするべきかってあんなにしおらしく悩んでたのは、一体なんだったんだ!」「? どうって、今後どうして行きたいか二人で真剣に話し合っただけだが」「そうっすよぉ。ぎくしゃくするのはお互いにつらいよねっ…

Happy unbirthday

ぱかん、と破裂音と共に陽気な紙吹雪が飛んできた。「誕生日おめでとう!」「……? 何の真似だ?」亮は後ろ手でドアを閉めて冷静に対処する。寮の廊下にはずらりと同級生たちが並んでいて、亮が起きてくるのを待っていたとでも言いたげだ。「何って、今日は…