俺はアイツが嫌いだ
入学式の日、通学路の桜並木。 こいつらみんな一年生かぁ、と黒山の人だかりに流されるまま歩いていると、何気なくパッと顔をあげた先で視線がぶつかった。たぶん一目惚れだった。 翌日、そいつが男だと知って小さくショックを受けた。たぶん失恋だった。…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,いとじゅん,伊藤,吉野順平
反射
「…アンモナイトだ」「はい?」「アンモナイトだよ。遊食アンモナイト。炭酸カルシウムが折り重なって七色に光るんだって。あんたの目はその色をしてる」「…初めて言われましたね」「あっほんと?七三のハジメテ、奪っちゃった?」「…」「あっ勿体ない!も…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,七海健人,真七,真人
おもかげさがし
右手でタバコをくわえ、ポケットからライターを取り出し、点火して一呼吸目。伊藤は白く濁った煙を吐きながら、コンビニの裏手口の壁にもたれかかる。寒さで白くなる息とは違う、不透明で淀んだ白。片腕だけで生活するのにもずいぶん慣れてしまった。もう三…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,レゾ,伊藤,真人,虎杖悠仁
痛みの味
「順平と喋るのはストレスがなくていいね」 真人は満足気に唸り、大きく背伸びをした。ハンモックがゆうらりと左右に振れる。「あんまり動くと落っこちますよ」 へいきへいき、と真人は順平の注意を軽くいなした。「順平、なに?」「いいえ、なんでも」「ふ…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,まひよし,吉野順平,真人
はびこる
あれ以来、隣の部屋はそのままになっている。 あいつの私物はもとから少なかった。鞄ひとつに納まるものしかなくて、必要最低限の着替えくらいしかそれらしきものは持ち込んでいなかった。恵も私物は多いほうではないが、一度だけちらりと見えたクローゼッ…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,伏虎,伏黒恵,虎杖悠仁
午前十時のユウレイクラゲ(初稿版)
記憶がある。 十年ほど前、まだ小学校にも上がる前のこと。母に連れられて見た水槽はどれも大きく、広く、青く澄んでいた。館内全体が薄暗く照明を落とした造りになっているのもあり、まるで自分たちが海底を歩いているような心地だった。母と手を繋いで順…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,吉野順平,虎杖悠仁,順悠