あんスタ

君の命日まで

「もー、いーくつ寝ーるぅと、おーしょーう、がぁつ」 清潔な白に囲まれた部屋。英智は横たわったまま、外の世界を切り取るには些か狭すぎる窓へぼんやり顔を傾け、口ずさむ。「あと340日くらいはありそうですねぇ」 水を入れ替えた花瓶に花を挿し戻しな…

最初の罪

 斎宮宗(9)は鬼龍家のお母様からレース編みを習っている。 宗はいつものように玄関に立ちチャイムを鳴らすが、どれだけ待っても返事がない。 不審に思った宗は無理やり柵を乗り越え侵入する。 友人でありここの息子である紅郎はどこへ行ってるのだろう…

半身

 葵ひなたはかつて自分自身を殺した、そのうえその死体を見ないふりしている。 見ない見ない、ゆうたくんと同じじゃ意味が無い。いまもその死体はそこにあるのに 見ない見ない、"葵ひなた"の死体なんて見ない、見えない、見ていない。 だって俺はここに…

其のはらわたは何色

『瀬名先輩と一緒に死にたかったのに、"また"死ねませんでしたね』 心中に失敗した司と泉は、接触による精神悪化を防ぐため別々の病院に搬送されていた。 なぜあんなことをしたのか、と病室でひとり放心する泉のもとに、どこから嗅ぎ付けたのか入院着のま…

この空の下にあるものすべて

 守沢千秋が率いる四人編成の部隊は、他に行くあてのない者たちの寄せ集めと称されていた。 戦闘機の操縦は天才的だが協調性のない明星スバル、もともと整備士だがテスト飛行が上手すぎて実働部隊に配属された衣更真緒。嫌々軍隊に入った高峯翠。 守沢は優…

神父と吸血鬼

 ある夜、教会の清掃を終えてスーパーで四割引になった惣菜を買った帰り。 暗闇の向かい側から、一匹の子猫が「にゃーん」と俺を呼んだ。生後三ヶ月くらいだろうか。動物は嫌いなほうではない。レジ袋を下げているからなにか餌をねだりにきたのだろうが、あ…