腐れ縁でも縁は縁
引っ越しの段ボールも残り僅かになった。最初の数日は千秋や薫に手伝ってもらっていたが、いつまでも引き留めるわけにもいかない。一人で黙々と荷ほどきと整理を片付け、ようやく人並みの生活が送れる手筈が整った、五月半ば。日付が変わってすぐのことだ。…
TEXT あんスタenst,カプなし,レゾ,三毛縞斑,深海奏汰
REPLAY:ワンシーン
「あさがお」「ん?」「あさがお。うまくそだたなかったんです。むかし」 アイスを齧るのをやめ、奏汰はぼんやりと遠くを見る。防波堤に腰掛ければ、視界に広がるのは海ばかりだ。余計なものは何一つない。潮風に牛乳アイスの甘い匂いが混じる。薫は髪を耳に…
TEXT あんスタenst,深海奏汰,羽風薫,薫奏
袖擦り合うのも他生の縁
「もしもさぁ」 奏汰の背中へ薫は呼び掛ける。青暗い館内は水槽の照明のおかげでほの明るく、まるでクラゲ自身が発光しているかのようだ。奏汰は水槽のガラスに片手をついたまま、ソファーベンチに座る薫へ振り向く。「もしも?」「……もしも、俺たちが、も…
TEXT あんスタ 再録enst,奏薫,深海奏汰,羽風薫
旅は道連れ世は情け(予告版)
旅は道連れ世は情け 花に嵐の喩えもあるさ さよならだけが人生だ 最初で最後のデートをしよう あの日の続き 漂流する今 未来に未練を残さないため 埋めた死体を数えよう 誕生日にはお祝いしよう そして ぼくらは旅に出た ***&nb…
TEXT あんスタenst,初稿版,奏薫,深海奏汰,羽風薫,薫奏
カーテンの内側で約束した
クリーム色のカーテンが風のかたちを柔らかく捉えている。このダンスルームはいま無人のはずで、なのにカーテンの下から人間の足が生えていた。薫はほとんど"ガワ”だけの薄っぺらな鞄を肩にかけ直し、窓辺に近寄る。 カーテンの裾をめくり、何見てるの、…
TEXT あんスタenst,深海奏汰,羽風薫,薫奏