午前10時のユウレイクラゲ─02.おろかものたちの不文律
「あ、」 「……あ」 白い煙を吐く口もとに、タバコを持った指先。しまった、とお互いに思ったのか、場の空気が凍りつく。校舎裏になど誰も来ないとたかを括っていたのだろう、伊藤はジッと順平を見つめ返した。 「なにしに来た?」 「椅子を借りにだよ…
再録Jujutsu-Kaisen,伊藤翔太,吉野順平,暴力,虎杖悠仁,順悠
午前10時のユウレイクラゲ─01.この世にたった二人だけ
からっぽのきみにクラゲを住まわせるこの手のなかは夢のうなばら 記憶の中の実家はいつも空っぽだった。鍵を差し込んでぐるりと回す。無機質な金属の音。ただいま、というセリフも…
再録Jujutsu-Kaisen,吉野順平,虎杖悠仁,順悠
俺はアイツが嫌いだ
入学式の日、通学路の桜並木。 こいつらみんな一年生かぁ、と黒山の人だかりに流されるまま歩いていると、何気なくパッと顔をあげた先で視線がぶつかった。たぶん一目惚れだった。 翌日、そいつが男だと知って小さくショックを受けた。たぶん失恋だった。…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,いとじゅん,伊藤,吉野順平
痛みの味
「順平と喋るのはストレスがなくていいね」 真人は満足気に唸り、大きく背伸びをした。ハンモックがゆうらりと左右に振れる。「あんまり動くと落っこちますよ」 へいきへいき、と真人は順平の注意を軽くいなした。「順平、なに?」「いいえ、なんでも」「ふ…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,まひよし,吉野順平,真人
午前十時のユウレイクラゲ(初稿版)
記憶がある。 十年ほど前、まだ小学校にも上がる前のこと。母に連れられて見た水槽はどれも大きく、広く、青く澄んでいた。館内全体が薄暗く照明を落とした造りになっているのもあり、まるで自分たちが海底を歩いているような心地だった。母と手を繋いで順…
TEXT 呪術廻戦Jujutsu-Kaisen,吉野順平,虎杖悠仁,順悠