薫奏

REPLAY:ワンシーン

「あさがお」「ん?」「あさがお。うまくそだたなかったんです。むかし」 アイスを齧るのをやめ、奏汰はぼんやりと遠くを見る。防波堤に腰掛ければ、視界に広がるのは海ばかりだ。余計なものは何一つない。潮風に牛乳アイスの甘い匂いが混じる。薫は髪を耳に…
旅は道連れ世は情け

旅は道連れ世は情け

【再録済】頒布終了・在庫なし/あんスタ!深海奏汰×羽風薫×深海奏汰/A5サイズ80p/二段組・約5万2000文字/会場頒布価格¥800/卒業から六年。失踪していた奏汰から電話がかかってきた。「『したい』があるんです。ぼくだけじゃ、うめれません」──奏汰くん、きみは、ひとを殺したの?
たまご色の憂鬱

たまご色の憂鬱

 朝。薫がリビングへ向かうと、ソファーの影から何者かがむくりと起き上がった。ちかごろ薫の自宅に寝泊まりしている奏汰だ。薫よりも一足早く目を覚ましていたようでリビングで待っていたのだろう。 目を擦りながら奏汰は開口一番「なんですか、これ」と言…

garden.

【再録済】在庫なし/あんスタ!羽風薫×深海奏汰 奏薫スイートピー合同誌/A5サイズ116p(小説1作品・漫画3作品)/会場頒布価格¥900/スイートピーとその花言葉をテーマとした、四人の執筆陣による合同誌です。「門出」を担当し、僭越ながら小説を書かせていただきました。

カーテンの内側で約束した

 クリーム色のカーテンが風のかたちを柔らかく捉えている。このダンスルームはいま無人のはずで、なのにカーテンの下から人間の足が生えていた。薫はほとんど"ガワ”だけの薄っぺらな鞄を肩にかけ直し、窓辺に近寄る。 カーテンの裾をめくり、何見てるの、…