ラキカ5

きみを馳せる

『ああそれ! クリスマスプレゼントだよ!』 電話口で彼はあっけらかんとした口調でそう言った。「気持ちはありがたいんだけどさ。吹雪、きみの中のサンタクロースは南半球の設定なのか?」 二つ折りの携帯電話と耳と肩の間に挟み、優介は手にしたそれを広…
味気なくもない男

味気なくも無い男

 クリームチーズとサーモンが乗ったクラッカー。二色のオリーブで生ハムを挟んだ小さな串。深緑色が鮮やかなパテに、三角に切られたキッシュ・ロレーヌ。会場の無数の照明を浴び、それらはいきいきと光を反射している。だがこの程度の立食パーティーなんて、…
海が呼んでいる

海が呼んでいる

 どうせサボるならビーチコーミングに行こう、と提案すると、なんだいそれ、と優介はこちらへ目を合わさないままに返事をした。「漂着物の観察のことさ。砂浜を歩きながらそこに落ちてるものを色々見てみるんだよ」「つまりただの散歩ってことか?」「そんな…