伊藤翔太

午前10時のユウレイクラゲ

午前10時のユウレイクラゲ─06.夢の終わりのばちあたり

 なめらかな闇が訪れる。数秒の間を置いて、正面のスクリーンにどこかの教室が映し出された。カメラの視点は低く、おそらくは机に固定されている。椅子には誰も座っていない。画面奥がカーテンが揺れている。その更に奥、外へ続く窓からヒグラシの鳴き声がし…
午前10時のユウレイクラゲ

午前10時のユウレイクラゲ─02.おろかものたちの不文律

「あ、」 「……あ」  白い煙を吐く口もとに、タバコを持った指先。しまった、とお互いに思ったのか、場の空気が凍りつく。校舎裏になど誰も来ないとたかを括っていたのだろう、伊藤はジッと順平を見つめ返した。 「なにしに来た?」 「椅子を借りにだよ…