斉宮宗

たった一言でいいから。

 引き戸がガタガタ揺らされている。隙間からは下手くそな口笛のような音が勢いよく漏れていた。今夜は大雪になるらしい。雪の礫混じりの強風は、築ウン十年のこの家を丸ごと薙ぎ倒してしまうんじゃないかとすら脳裏によぎった。(ま、お師さんン家やし、そん…

最初の罪

 斎宮宗(9)は鬼龍家のお母様からレース編みを習っている。 宗はいつものように玄関に立ちチャイムを鳴らすが、どれだけ待っても返事がない。 不審に思った宗は無理やり柵を乗り越え侵入する。 友人でありここの息子である紅郎はどこへ行ってるのだろう…