500字以下のお話
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天国になんか行かない
「私は天国を信じていません。キリスト教徒である祖父母は『神さまはいつも見ておられる』と言っていました。けれど私自身はそもそも神など居ないと思う、無神論者です。だって天国と地獄があるなら、世の中はみな善人か悪人かのどちらかに必ず分けられるということでしょう。そんなことはありえない」
「私は善人にも悪人にもなれない。なりたくもない」
「大丈夫、七海は優しい奴だよ。僕がそれを証明する」
「どうやって」
「僕がついてる。絶対に。道に迷わないように手を引いてあげるよ」
「…灰原くん、あなた今週だけ自分が年上だからって調子に乗ってるんじゃないですか」
「へへ」
彼の青い血
「きみ、ひょっとして血が青いんじゃないか」
「ハァ!?シツレーだな。赤に決まってるだろ」
「でも私はきみが血を流すところを見たことがない」
「…………傑?」
「表へ出ろ、とはもう言わないんだね」
「傑?」
「いや、なんでも。きみが赤だと言うならきっと赤いんだろうね」
抜け出せない!
「…歌姫ちっちゃいね」
「アンタがデカイのよ」
「…………」
「……らしくないわね」
「だって僕が思いっきりしたら抱き潰しちゃう」
「え、そんなこと考えてんの? 女々しッ」
「…だってほらぁ僕いま酔ってるもん。力の加減できない」
「嘘ね。私へセクハラする建前が欲しいんでしょ」
「嘘でも建前じゃないもん…」
「え、まさかマジなの?」
「マジマジ、あ、待って眠……」
「ちょっと!! この姿勢で寝るな馬鹿!」
「…………」
「マジで寝やがった…。…………!? 嘘でしょ、出れない…」
last
「順平は家入先生のとこで鍛えてもらってサポートに回るんだよな。そしたら遠距離になっちゃうもんな。俺、この一年が済んだら死ななきゃいけないしさ」
「最後に8本まとめて食わされるのエグくねえ?あれマジでまっずいんだよ。続けて食えるもんじゃないっつーの」
「…順平、泣かなくなったよな」
生き埋めの食卓
「僕が不遇の死を遂げて呪霊になったらさ、残さず食べてね、傑」
「嫌だね。そうなる前に私がきっちりトドメを刺すんだから。悟は術師のまま死んでくれ」
「じゃあ術師のままでもいいから全部食べてよ、いますぐ」
「まったく稚拙な据え膳だな」
「嫌いじゃないでしょ?」
「まあね」
永訣
「僕は七海の術式好きだよ。なんでも割り切っちゃうなんてすごく明瞭でわかりやすくていい。術式は魂だ。七海、僕は七海の魂が好きだ」
「ま、七海がトドメ刺すのに失敗して、僕が呪いになっちゃったら夏油さんのとこ行くんだけどさ。それ、きっと嫌だろ? …ほらやっぱり。顔に出やすいよな」
「僕は七海の
「僕を殺せ」
「…きっちり割り切ってくれ。難しいかもだけど。僕は後悔してないからさ」
「よく喋るやつだなって?いいだろ、こういうのは静かだと湿っぽくなっちゃうんだ」
「……七海、」
きみの眼もたましいさえも愛おしくきみそのものも憎悪していた
私たちはきみを神や仏の類と思っている。
きみがその眼をもってこの世に顕現したのがその証拠だ。無限を扱うなぞ到底人の仕業とは思えない。
しかし、私個人はきみが人間であることを知っている。
偶像のかたちから溢れた部分なら、私が余さず拾い集めよう。
悟、私たちと一緒に行こう。
などと私がいくら嘆願しても、きみはこれっぽちも揺るがない奴だったね。
ああでも私は風の噂に聞いたんだ、「赫」の字(あざ)を未だに使っていると。
その字はかつて私が呟いた一言に起因しているのだろう。裡側からあかあかと輝き放つその術。
悟、叶わないのなら、どうかその字を持ち続けてくれ。